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世界初の抗生物質!青カビから生まれた「ペニシリン」とは【抗生物質の現在】

   

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世界で初めて発見された抗生物質が「ペニシリン」です。ペニシリンの発見により感染症の治療が可能になり、たくさんの人の命が助けられました。そして、そんなペニシリンを生んだのはまさかの青カビ。新しい発見が偶然から生まれる例は多々ありますが、その中でもペニシリンの発見は稀有なケースだといえるでしょう。
ここでは、そんなペニシリン誕生の歴史についてみていきましょう。

 

ペニシリン誕生の歴史

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ペニシリンを発見したのは、イギリスの医者・細菌学者であったアレクサンダー・フレミングです。1881年に誕生したフレミングは、1903年にロンドン大学セント・メアリーズ病院医学校に入学し、その後医学博士となりました。
 
そして、第一次世界大戦が勃発したのが1904年。フレミングはフランスの戦場病院に召集され、細菌研究施設にて細菌の研究に従事することになりました。しかし、ここでフレミングが目にしたものは恐ろしい感染症に次々と罹患する戦傷兵の姿。この経験をきっかけとして、終戦後フレミングは感染症治療薬の開発に没頭するようになりました。
 
そして、フレミングにある幸運が訪れたのが1928年のことです。この日、フレミングはシャーレでブドウ球菌の培養を行っていました。しかし、シャーレで細菌培養を行うときの問題点の1つがコンタミネーション(汚染)です。培養しようとした細菌以外のものがシャーレ上の寒天培地に入り込み、目的としていた細菌以上に増えてしまうことは珍しくないのです。
 
この日もフレミングが使用していたシャーレ内ではコンタミネーションが起き、青カビの胞子が繁殖してしまいました。しかし、このときにフレミングの観察眼が働きました。よくよく観察すると、青カビの周りのブドウ球菌が繁殖していないということに気付いたのです。
 
この出来事をヒントに、フレミングは「青カビにはブドウ球菌の発育を抑える物質が含まれているのではないか」とひらめきました。このことを確かめるために青カビの培養液をろ過したところ、抗菌物質の存在を突き止めることに成功したのです。
 
カビの専門家にこのときの青カビの同定を依頼したところ、この青カビはペニシリウム属に分類されるものであることが分かりました。このことから、のちのち多くの人の命を救うことになるこの抗生物質は「ペニシリン」と名付けられたのです。

 

ペニシリンの実用化

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ペニシリンを発見したフレミングは、その後はペニシリン実用化のための研究に邁進しました。主な課題は、ペニシリンの大量生産を可能にすること、そしてより効果を高めることの2つ。そして、この2つの課題を解決するためにはペニシリンの精製が不可欠でした。しかし、これは細菌学者であるフレミングの専門分野ではなかったため、結局フレミングがペニシリンの精製に成功することはありませんでした。
 
そんなとき、ペニシリンに興味を示したのがフレミングの論文を読んだオックスフォード大学のハワード・フローリーとエルンスト・ボリス・チェーンです。彼らは研究資金をペニシリンに注ぎ込み、やっとのことで不安定なペニシリンの粉末を得ることに成功しました。フレミングによるペニシリンの発見から10年以上経った、1940年のことでした。
 
そこからは、動物実験、臨床試験と、ペニシリンの実用化のための研究はどんどん進んでいきました。そして、太平洋戦争が始まったのが1941年。兵士たちを感染症から守るためペニシリンの研究は国家機密に指定され、第二次世界大戦中にペニシリンの大量生産が可能となりました。
 
もっともペニシリンがその効果を発揮したのが、1944年の「ノルマンディー上陸作戦」のときです。ノルマンディー上陸作戦は第二次世界大戦の転機となった史上最大の作戦と呼ばれており、その規模は非常に大きなものでした。しかし、このときに病院に運ばれてきた戦傷兵たちはペニシリンのおかげで敗血症やガス壊疽に陥ることなく、順調に回復していったのです。ペニシリンの真価が発揮された瞬間でした。
 
この後、1945年にはフレミングとフローリー、チェーンはノーベル医学生理学賞を共同受賞しました。そして、終戦後にはペニシリンは民間人の間にも徐々に広まっていきました。兵士のみならず、たくさんの人がペニシリンの恩恵を受けられるようになったのです。

 

耐性菌の出現

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ペニシリンの出現により、それまでは手も足も出なかった感染症はもはや怖くないものだと思われました。しかし、人間と病原菌との戦いがここで終わることはありませんでした。なぜなら、抗生物質に対して抵抗性をもつ「耐性菌」が出現するようになったからです。
 
開発されたばかりの頃は「奇跡の薬」だといわれていたペニシリンも、大量生産が可能になると一気に安価になりました。そのため大したことのない体調不良でも気軽に処方されるようになり、欧米においては家畜の病気の治療に使用されることさえありました。本来は、抗生物質はちょっとした体調不良に対して投与すべきものではありません。しかし、当時は抗菌物質に対する知識が乏しかったことから必要以上に使われるようになってしまったのです。
 
しかし抗生物質を使い過ぎると、病原菌はそれに合わせて自分自身を守ろうと進化していきます。その結果、抗生物質が効かない耐性菌ができあがります。ペニシリンの耐性菌の問題が顕著になったのは、1960年代。それまでは効いていたはずのペニシリンが効かなくなったため、医療にとって大きな打撃となりました。
 
ペニシリンで治療できないのであれば、他の作用メカニズムの抗生物質を開発するしかありません。しかし、どのような作用メカニズムだとしても治療のために使い続ければいつかは耐性菌が現れてしまいます。新しい抗生物質の耐性菌が出現したら、また他の抗生物質を投入することになります。ペニシリンの発見以降、人類と細菌はこのようにいたちごっこを繰り返しているのです。

 

抗生物質の現在

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ペニシリンの発見以降、世界では数々の抗生物質が生み出されました。ここでは、現在医療現場で使用されている主な抗生物質をご紹介します。

ペニシリン系抗生物質

ペニシリン系抗生物質の作用メカニズムは、細菌の細胞壁合成阻害です。人間の細胞には細胞壁はありませんが、細菌は細胞壁がないと生きることができません。そして、細胞壁を合成するために必要となるのがペニシリン結合タンパク質(PBP)。ペニシリン系抗生物質は、PBPに作用することによって抗菌作用を発揮します。
 
ペニシリン系抗生物質が用いられる主な病気としては、肺炎や梅毒、猩紅熱、急性気管支炎、スピロヘータ感染症などがあります。ただし、ペニシリン系抗生物質は薬剤によって抗菌スペクトルが大きく異なる場合があります。そのため、同じペニシリン系抗生物質だからといってすべて同じ感染症に利用されるわけではありません。

セフェム系抗生物質

セフェム系抗生物質は、ペニシリン系抗生物質と同様に細菌の細胞壁合成を阻害することによって効果を発揮する抗生物質です。基本的な作用メカニズムは同じですが、主な相違点は抗菌作用の範囲です。
 
ペニシリン系抗生物質はグラム陽性球菌に活性を示し、グラム陰性桿菌には活性を示しません。それに対し、セフェム系抗生物質はグラム陰性桿菌に活性を示します。なおセフェム系抗生物質は第一世代から第四世代まであり、世代が上がるにつれグラム陽性球菌にも活性を示すようになります。
セフェム系抗生物質を使う主な病気は、髄膜炎、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎などです。なお、セフェム系抗生物質は妊婦にも安全に使えるといわれています。

マクロライド系抗生物質

マクロライド系抗生物質の作用メカニズムは、細菌のタンパク質合成阻害です。タンパク質合成はリポソームという器官で行われますが、人間と細菌ではリポソームの形が異なります。マクロライド系抗生物質は、細菌のリポソームだけに作用して抗菌作用を現します。
 
マクロライド系抗生物質が用いられる主な病気は、肺炎やクラミジア・トラコマティス肺炎、クラミドフィラ肺炎、ヘリコバクター・ピロリ感染症、クラミジア性感染症などです。なお、マクロライド系抗生物質は味が苦く飲みにくいことで知られています。特にジュースなどと一緒に飲むと苦みが増すので注意が必要です。

テトラサイクリン系抗生物質

テトラサイクリン系抗生物質は、リボソームの構造の違いを利用してタンパク質合成を阻害するという点でマクロライド系抗生物質とよく似ています。ただし、細かい部分までみると結合部位や作用メカニズムに違いがあります。
 
テトラサイクリン系抗生物質は、すべての抗菌薬の中でもっとも広い抗菌スペクトルを示します。ただし、すでにかなりの耐性菌が出現しているのがテトラサイクリン系抗生物質の問題点。今でも治療には使われているものの、以前と比べるとその有用性は低下しているようです。

ニューキノロン系抗生物質

ニューキノロン系抗生物質の作用メカニズムは、DNAの合成阻害です。ニューキノロン系抗生物質が作用するのは、細菌がDNAを複製するときに必要なDNAジャイレースやトポイソメラーゼⅣなどの酵素。これらを阻害することにより、殺菌的に抗菌作用を示します。
 
ニューキノロン系抗生物質は抗菌スペクトルが広いため、尿路感染症、腸管感染症、呼吸器感染症など幅広い感染症に有効です。なお、ニューキノロン系抗生物質はAl、Mgなどのミネラル含有製剤・食品などと併用すると作用が弱まることがあるので注意する必要があります。

 

たくさんの命を救った抗生物質

世界初の抗生物質であるペニシリンは、偶然がきっかけで発見されました。そして、それ以降は数々の抗生物質が開発され、たくさんの人の命を救い続けています。
しかし、現在は耐性菌が問題になっています。正しく抗生物質を使わないと、治すことのできない感染症がどんどん増えてしまいます。抗生物質を処方されたときには、きちんと必要な分だけを服用するようにしたいですね。

 - 性病・細菌感染の薬

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